独立FPの独白ブログ

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■テレビ界の『掃き溜めに鶴』番組


暫く前まで、笑福亭鶴瓶というひとを実はあまり好きではなかったのです。バラエティ番組で当意即妙のコメントをするでもなく、お笑い番組に大御所として出演しても特に何かギャグを出すでもなく、中途半端なお笑いタレントのようにすら感じていました。落語に専念して寄席だけ出てればって。
しかしあるテレビ番組を見るようになって以来、ここ数ヶ月でそんな私の評価はすっかり、まるっきり、とてつもなく変わりました。鶴瓶さんが素晴らしい才能の持ち主であることを知ったのです。


毎週月曜夜8時に放送されるNHKの「家族に乾杯」はいかにもNHKというくさあいタイトルです。
しかし、じつはこの番組はかなりNHKらしくない「台本無し」番組です。
鶴瓶さんと週代わりのゲストが田舎の街や村をウロウロ歩いては、その地区の人々と挨拶を交わして気ままに会話を始めます。
時には近所を案内してもらったり、時には住人の家にあがり込み、お茶を飲んだり、自慢の家宝を見せてもらったり、親戚を呼んできて大騒ぎになったり、全て行き当たりバッタリの田舎お散歩番組です。
はっきり言いまして、私はこの番組を何度か見るうちに大好きになりました。


いつも田舎には人々の触れ合いがあります。みんな周りにどんな人が住んでいるかを知っていますし、誰々の家の嫁さんはこんなひと、どこどこの息子がどこに勤め始めただのなんだのと皆が知っています。
きっと毎日面倒くさいでしょうし、いつも同じ顔ぶれで刺激の無い毎日でしょう。でも、社会とは本来そういうものです。


田舎の人達の普段着の顔、台本無しの普通の会話に突然の来訪者である鶴瓶さんがなんとも自然に入り込んで行き、しかもすぐに仲良くなってしまうその雰囲気、媚びるでもなく、軽んじるでもなく、普通の会話をする鶴瓶さんの普通な感じ。こんな才能を持っていた人だったのだと始めて知りました。


人はみなそれぞれなのだから余計なおせっかいは決してしない、互いの生活には干渉しない、余計なことは言わないし知らない方がいい、ということが正しいと思われるような価値観がある時期からの日本の空気を支配していました。
そして、そういう何かがスッポリと抜け落ちているような都会の乾いた生活にも何故か憧れを抱き、どこもかしこもが擬似都会を目指すような妙な流れが日本を支配してきました。そうした流れの結果が、今の日本の惨憺たる状況の一因を作ったと私は思います。


田舎には、まだまだ日本人のとってもいい部分が(嫌な部分もひっくるめて)確実に残っているようです。日本はまだ、死んではいないらしいと思えて、毎回必ず涙します。
いつも孤独感にさいなまれながら無味乾燥にして冷たい毎日を虚しく過ごしているような気がしている都会人がもしもいたなら、その人には是非一度この番組を見て頂きたい。


政府広報放送局と化したかに見えるNHKにもかろうじて良心は残っていたのです。