独立FPの独白ブログ

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■ウワサの「噂」

噂 (新潮文庫)

噂 (新潮文庫)



荻原浩というと「明日の記憶」という小説が渡辺謙プロデュース&主演で映画化されて話題となった最近の売れっ子作家さんです。少し前から気になっていたこのひとのあまり数は多くないらしいミステリ作品が「噂」です。キャラクター作りが多少、クサイというかケバイ?感じはしましたが、結構楽しませてもらいました。


女子高校生世代を中心にした若い少女達の独特のコミュニケーション世界。彼女らが持つ情報伝達力に注目して新規商品のマーケティング戦略に活用するという手法は現実にも行われているようです。
ある新製品の販売促進を目的に始められたイメージ作り戦略の一つである「噂の流布」が進行するなかで、残忍な連続殺人事件が起き、それらがどのよう絡んでくるのかを追いかけるミステリです。


優良な情報も醜悪な情報も、その内容の特性や流れるタイミングなどの条件がそろった時にはあっと言う間にネット上を駆け巡ることのある現代です。インターネットとケイタイによるコミュニケーションの有効性と同時に存在する危険性を感じ、薄ら寒さを覚えることもあります。
つい先日にもある小学校教師が子供の死体や裸体映像をネットに公開していたという恐ろしい事件が起きています。恐るべき狂気の犯罪が決して絵空事ではないと感じられてしまう今の世の中を思うと、またしても暗い気持ちになります。事実は小説より醜なりです。


ただこの小説では、共に独身で子持ちという中年刑事と女性刑事との付かず離れずの道中劇的展開がストーリーに色を添えていて、作者の読ませ上手な感じも受けました。文庫の帯に記されていますが「衝撃のラスト一行」は確かにどう考えればよいのか読み終えたあと暫く迷いましたし、私の中ではいまでもはっきりしないままです。ある意味で独特の読後感を残します。この人の小説は今後も読んでみたいと思いました。