独立FPの独白ブログ

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■『ミュンヘン』〜史実に基づいた物語

スピルバーグ監督の渾身の最新作をついに観てしまいました。
絶対に観ようと暫く前から決めていたのに、なんとなく観に行くことが怖いような妙な障壁を意識していましたが、ついに観てしまったのです。
感想は・・・ただひとこと、キツイ・・・です。


映画館を出てから家に帰る途中で、なんどか涙が溢れそうになりました。
その涙は、感動の涙ではなく、感銘の涙でもなく、なんともいえない寂寞感に誘われる涙です。親兄弟を殺害された者たちが結束して敵の親兄弟を殺す、その殺された者の家族や仲間たちが決起して自爆テロに走る、その結果、報復の空爆を浴びる・・・・そんなことを何十年も繰り返している人間達が世界中にいるのです。日本人だけが他人の顔をしてことなかれ主義で日々を送ることなど、今や絶対に通用しないでしょう。


イスラエルのシャロンが生死の境をさまよい、イランの大統領が強行発言を繰り返し、パレスチナではハマスが圧勝し、デンマーク発のイスラム教徒侮蔑問題の火がまだ消えない、イラクでは毎日のように自爆テロの連続というそんな状況の今、ユダヤ人スピルバーグが世界に発信したこの映画の意味を、観た者は噛締めるべきだと思います。


イスラエルを批判していると非難されたスピルバーグ監督は、”「ミュンヘン」は決してイスラエルを攻撃するものではないし、暴力に暴力で応じるイスラエルの政策についてもほとんど批判していない”、と自ら語ったそうです。

私が観た感じでは「どちら一方の側に立って、どちらかを擁護した非難したりする姿勢」は一切感じることは無く、「暴力が暴力を生み続けること」 「怨念が怨念を増幅し続けること」の悲しさ虚しさ残酷さをただひたすら訴えようとしているように感じました。
ブッシュ政権下のアメリカの行いはまさにこの「暴力が暴力を生み続ける」愚かで残酷な連鎖にしかならないこともスピルバーグは示唆しているのでしょう。


パレスチナ人への復讐の任務を終えて主人公が移り住んだのはニューヨーク。
この映画の最後シーンはそのニューヨーク、マンハッタンの遠景ですが、その画面の中心ににょっきりと立っている一対の高層ビルこそ、2001年9月11日に旅客機が突っ込んて消失したあのビルでした。