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独立FPの独白ブログ

この世界を少しでも美しい姿で後世に引き継ぎたい!

■謀略小説

ビッグブラザーを撃て! (光文社文庫)

ビッグブラザーを撃て! (光文社文庫)

先日紹介した「時の渚」を読んで文章のうまさに感嘆した勢いで、笹本稜平氏の処女作「ビッグ・ブラザーを撃て!」を読んでみましたが、期待が大き過ぎたせいかどうもイマイチでした。


題名の前に謳われているとおりこの冒険小説は「長編謀略小説」ということになります。
昔で言えばナポレオン・ソロとイリヤ・クリアキンが世界征服を狙う悪の組織「スラッシュ」と死闘を演じるとか言う類の話を、荒唐無稽としか感じない真面目一方な方には不向きです。


また、コンピュータ・ネットワークにおける暗号化システムを利用した世界征服、というようなことが主題となっているため、IT関連用語などに対してアレルギー反応を起こしたりする人にもあまりお勧めできません。
たとえば『キーワードを検出するとその暗号化ソフトは自らが導入されているシステム=つまりビッグブラザーのサーバー内に、自らの分身である小さなプログラムを産み落とす。そのプログラムは以後1時間だけシステムのバックグランドに常駐し、その間に誰かがログインすると端末のキーボードからの入力を横取りして隠しファイルに記録する・・・・・・・・』というような文章に対して「な・な・なんじゃそりゃあああ」といった反応をしてしまう方にはかなり不向きではないかと思います。


幸いに初歩的なIT用語への違和感は殆どない私ですが、この小説の台詞回しにはどうもすっきりしない感覚が付きまといました。(時々そういう台詞が出てくる程度なんですけど…)調べてみればこれが現在のペンネームとは違う名前で発表していた処女作だったのということが分かり、あれだけ文章がうまいと感じた作家でも、初めのうちはいろいろ問題点もあったのかしらと妙に得心したりしたのです。「2冊目は難しい」という私の格言(笑)のとおり、今回は少々残念な感じでした。


でも、「時の渚」のイイ感じが残っているし、ビッグ・ブラザーももう少しあれがああならああなのに、というように「惜しい!」という感じの小説だったので、この作家への期待度は下がることなく、3冊目はすでに購入済みで近いうちに読もうと思っているのです。