独立FPの独白ブログ

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■かんぽ巨額資金の行く先

郵政民営化 公取委が競争阻害の例を指摘
政府の郵政民営化委員会(田中直毅委員長)は18日、07年10月の民営化で発足する各事業会社と民間との競争政策について、公正取引委員会から意見を聞いた。公取委は「民間生保会社などに対して郵便局網が閉鎖された状態の場合は、公正自由な競争が損なわれる」などと指摘した。
公取委は、独占禁止法違反の恐れがある例として、郵便局会社が「ゆうちょ銀行」や「かんぽ生命保険」と共同して民間銀行や生保との代理店契約を拒んだり、ゆうちょ銀行が融資する会社に、郵便事業会社との取引を条件にしたりするケースを挙げた。(asahi.comより)

郵貯についてはあまり詳しくありませんが、簡保については保険屋の私としては長年のライバルとしての情報を色々持っています。保険屋初心者(転職して1〜2年)の頃には、「実は簡保(郵便局の生命保険事業の総称)の販売員こそ、外資系生保の最も優秀で強力なライバルである」ということを聞かされたものでした。日本人の貯金好きな特徴に見事に対応して「貯蓄性の高い保険」(殆どが医療特約付きの養老保険)で全国津々浦々の家庭に根を張り巡らしていた印象が強烈です。


しかし、保険屋稼業の経験を積み重ねてゆくうちに、その「優秀な」という部分については疑問を感じることも多くなりました。例えば、保険屋になる以前のサラリーマン時代に私自身が加入していた簡保の養老保険があったのですが、私は自分でサインをした記憶がありません。
民間の生命保険では契約の際に契約者および被保険者(保険の対象となる人)の自筆のサインと捺印は絶対条件であって、本人がサインをしない個人契約などがもしあれば、それは完全な不正契約です。
これは他人の話ですが、本来は支払い対象とならないような告知義務違反などがあったのに、特別な取り扱いで給付金を払ってもらったことがある、という話を聞いたことがあります。


保険会社の様々な規定などは保険業法によって規制され、またその業務の監督官庁は金融庁ですが、現実には殆ど同質の保険商品であるのに、簡保の監督官庁は総務省であり、つまりほぼ同じ商品であっても全くことなる行政系統に入っているわけです。
民間生保と競争条件を同等にして適正な競争原理のもとに置くべきであるという(主に)アメリカの主張していること自体は、間違っていないと私も思います。
また、簡易保険が民間の保険に比べて優位であるという事実は、私の把握する限りではほとんどありません。(劣っているとは言っておりませんよ!)もし優っている点があるとすれば、バックに国が付いているという安心感がもたらす好印象くらいのものと思っています。このたびの民営化によってそういう「印象」がガラリと変わるだけでも業界の競争上の大きな変化です。


ところで、建設業界などを中心に談合摘発がひっきりなしに行われるようになったのは、アメリカ政府の対日構造改革要望の大きなテーマのひとつである「公正取引委員会の権限の強化」によるところが大きいのは周知の事実です。(・・でもないかなあ。ピンと来ない方は【拒否できない日本】を読みましょう。)
公取委はある意味ではアメリカのおかげで権限強化、地位向上が実現できているとも言えるでしょう。ですから、アメリカ生命保険協会が次なる市場として狙っている巨額の簡保資金が、公正なる競争原理のもとで自由競争市場に滞り無く行き渡るべく頑張るのは当然なのです。


さて、長年築き上げた開かずの扉をとうとうこじ開けられてしまった郵政としては、ただ資金が外資系金融に流れるのを見ているわけには行きませんから、色々と策を講じています。(このあたりの攻防のウラの動きまではまだ私には把握できません)
たとえば郵政公社は最近投資信託をバリバリと販売し始めています。


銀行が勧めるのだから大丈夫と、リスクを理解せずに変額年金を契約する高齢者が多発しているように、養老保険の延長線上の理解で(つまり誤解して)投資信託を買うお年寄りが増えないことを祈るばかりです。
また来年からは今度は自動車保険の販売を開始します。優秀で強力な販売員達によって、全国津々浦々で自動車保険販売が始まれば、既存の損害保険代理店はどうなってしまうのか、とかく危機感が薄いといわれる損保代理店業界でも、さすがに漠然とした不安が漂い始めているようです。


消費者にとっては、選択肢がドンドン増える→ますますわからなくなる→ミスマッチな契約が横行する、という連鎖にならぬよう、一層の「自己責任の自覚」が必要となるのは間違いありません。