独立FPの独白ブログ

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■『火の粉』は結構徹夜本!

火の粉(雫井修介:著)は文庫で550頁を超える長編ですが、遅読の私としては異例の速さといえる3日間で読破しました。ちょっと特異な状況設定に初めから引き込まれ、どうするんだい、どうなっちゃうの、という具合にぐいぐいと引き込まれます。


登場人物達はそれぞれの立場でちょっとおかしい言動を繰り返し、常識人(?)の私としてはそうした人物達の非常識さや理不尽さ愚かさなどに少々苛立ちを覚えたりすることしきりです。
しかし、いやいや現実にも決してあり得ない事ではない、こういう奴は結構いる、また、自らもこういう反応をすることもあるなあ、などどいちいち納得しつつ読み進むうちに、事態はどんどんとまずい方向へと進んでゆきます。
超有名な追っかけドラマ「逃亡者」で味わったような、イライラ、ハラハラ、ドキドキ感を少し思い出しました。


また、これは作者の意図かどうかは不明ですし、このミステリの主題と関係が無いかもしれませんが、「男の愚かしさ」を強く感じた小説でもありました。
主人公一家の親父も息子も実に情けないほどの独りよがりの愚か者です。
こういう男達の長年の愚かな言動の蓄積が日本を危機的状況に追い込んでいる主要因であるということに思いを馳せたりもしたものです。


リスクを自分の問題として認識して対処する感覚の薄い日本人の危ない一面も炙り出されているように見えました。
いつの世も、「火の粉」はいつ飛んでくるか分からないのです。



火の粉 (幻冬舎文庫)

火の粉 (幻冬舎文庫)