独立FPの独白ブログ

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TPP参加に賛成?反対?

TPPに賛成か反対か迷っていたので、ブログを書けない状態が続いてしまいました。私なんかが何を言おうと書こうと、別にどうでも良いのですが、やはり何らかの意見を表明しないとどうも落ち着かないという妙な心境の数日でした。


単純に考えると「アメリカの世界市場化戦略にいつものように安易に乗るリスク」という印象が強いので「感覚的に反対」ではあったのです。しかし私が勝手に師匠と思っている言論人の中にも賛成意見があるし、グローバル化は避けられない流れだろうし、正当な規制緩和は必要と思うし、既得権益にしがみつく姿勢は衰退につながるし・・・本当はどうするのが良いのか分かりませんでしたが、やっと考えがまとまりました。


私は今の日本の体制でTPPへ参加することには反対です。このことについて時間をかけて研究したり調査したりした結果ということではないので、やはり非常に感覚的な判断です。しかし一般市民は生身の人間であって、生活実感から色々なことを考えるしかないのです。良い悪いの問題ではなく、市民は生活感から判断し、政治家は次回選挙の読みで判断し、官僚は組織の繁栄目的で判断するのです。(但し、その判断に長期的視点が加味されているか、或いは短期的思考のみかは別問題ですが)


私の保険のお客様でアメリカ移住している方がいます。そのかたは最近ある病気の治療で手術をすることになったのですが、そのために日本に一時帰国することになりました。アメリカにはもうかなり長期間暮らしていて言葉の不安があるわけではないし、ご家庭も彼の地に定住しているのに、手術のためだけにわざわざ日本に戻るのです。何故なのか?


お聞きしたところ、アメリカで治療すると手術費用が10万ドルかかるそうです。超円高といわれる現在でも円換算で770万円(前払いで)です。
しかも、いつ手術ができるかは全く分からない!と言われたとのこと。(単位間違いではありません)
そして、その手術を日本で受ける費用は約30万円だそうなのです。(単位間違いではありません)居住の手続きをして健康保険適用が出来る場合なら(もちろん保険料を支払って)、その3割負担で約10万円ということになります。
私は仕事がらアメリカの医療費用がベラボウに高いことは知っていましたが、ここまでの凄まじさは想像を超えていました。


彼はこう言っています。「アメリカは医療技術の先進国だが、医療制度では後進国。日本は医療に関しては天国です。しかし、こんなに医療保険制度を良くし過ぎるといずれ破たんするのでしょうね。」


天国といわれるような公的医療制度から医療を引っ剥がして市場化する。
医療費準備のために民間保険会社が医療保険を販売拡大する。
国家の後ろ盾で優位に営業できる簡易保険や、低コストで拡販する共済などの保険事業者についてはルールを同じにさせる。


アメリカ企業などが世界市場で自由に活動するために、その障壁となる日本固有の様々な制度をできるだけ破壊してフラット化し、自由市場の原理が通用するようにルールや制度を変えてゆく。
旧制度を守ろうとする者たちがいれば、ルール違反だと言って法的に訴える。
米国内で余り気味の弁護士が日本に上陸してきて法廷で勝利する。
複雑怪奇な日本語を駆使するのは面倒なので、法律は出来るだけ英語に翻訳することを推進中。
あらゆる分野での施設建設にアメリカ企業が参入しやすくするために建築の基準も変更する。
業者選定に関して日本国内企業が談合しないように公正取引委員会の権限を強化する。
こうしたことを「日米構造協議」やら「改革要望」などで着々と実行してきていますから、TPPでアメリカが考える規制撤廃路線はその流れに沿ったものなのは当たり前でしょう。


高い保険にも入れるし、高い医療も受けられる、いざとなれば高い弁護士費用も払えるような成功者になるためには、自由なアメリカで賢明な努力をするのだ。努力を惜しまず懸命に勉強し、必死で働く者だけが生き残るのであって、そうでない人は怠け者なので仕方がない。アメリカンドリーム万歳。


そういう仕組みづくりにうまく乗って富を得るために、日本国内でも周辺業界が集まってきて、一大利権集団を作り上げるのだ。乗り遅れるのはバカなのだ。しかしこういう構図自体に対してNOと言い始めた表れのひとつが世界各国で起きている「格差拡大反対デモ」ですね。アメリカンドリームは幻想と気づいた人がウオール街を占拠?したりしています。


私はアメリカが悪魔の国だなどと言うつもりは全くありません。異常な現象は沢山あるけど、他の国でも色々あります。アメリカは他の沢山の大国と同様に戦略的なのであって、その戦略を実行するのがアメリカ政府だというだけの話でしょう。
では、日本の戦略は誰が考えて誰が動かしているのか。そもそも日本の国家戦略はあるのか?・・・ここが大問題です。
今の日本には、国民の安全と幸福を実現するための国家の戦略があるとはとても思えません。だから私は「今の日本の」TPP参加には反対です。


今迷っているひとにお勧めしたいもの。
マイケル・サンデルの正義の議論と、マイケル・ムーアの一連のアメリカ市場主義批判映画(シッコとか)、それと、詩人アーサー・ビナードの一連の発言です。
みなさんアメリカ人です。