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独立FPの独白ブログ

この世界を少しでも美しい姿で後世に引き継ぎたい!

憲法は誰が造ったのか

年頭に当たり、沢山のひとに読んで欲しいと思う本を紹介します。
今年をより良い年としたい、より「善き」人生の一歩としたいと真面目に考えている皆様に、是非ともお奨めしたいと思うのは、小室直樹:著「日本人のための憲法言論」です。
2010年9月に惜しくもこの世を去った著者の小室直樹氏は、数学、理論経済学、心理学、社会心理学、社会学、政治学、法学などを学びました。
扱う内容の重さに比して文章や構成は大変読みやすくできていて、読み物としての楽しさを感じつつ深い内容を理解できる良書だと思います。

日本人のための憲法原論

日本人のための憲法原論


この本を読んだのは昨年師走のはじめでしたが、その内容のあまりの深さ、大きさに、どこをどう紹介すれば良いのか、どう表現すれば読みたいと思ってもらえるのか、迷い続けているうちに年を越し今日になってしまいました。


最近の本の世界では「学術的分野の関連本」が異様に売れているという現象がありますよね。人気のテレビ番組の評判をきっかけにして売れているサンデル教授の「これからの正義の話をしよう」は「政治哲学」の大学での講義録を元にした書籍です。こういう分野の書籍が年間ランキングでも上位につけるほどの人気となるのは非常に珍しい現象のようです。
他にもそのサンデル本の3倍くらい売れたという「もしドラ」や「超訳ニーチェの言葉」などなにしろ哲学やら経営学やらの本がよく売れている背景には、迷える日本人のすがる思いというものがあるように思います。


【「いつもきょろきょろしていて、新しいものを外なる世界に求めている態度」こそが日本人のふるまいの基本パターンであり、個人レベルでも国家レベルでも変わらない。そして、その性格こそは「辺境の国」としての特徴である】
これはちょうど1年前にブログで紹介した内田樹氏の日本辺境論の骨子の一部です。


辺境の地の民族、我ら日本人には、実は立ち返るべきアイデンティティの故郷、民族の生れ故郷があまり明確になっていません。民族の成り立ちと苦難の歴史を記録した物語としての「神話」や国の成り立ちの根本思想原理としての「宗教」がありません。多くの国の民族が必死に守ろうとする「生きる上での根本理念や規範とすべき思想背景」がありません。
もちろんキリスト教の洗礼を受けた人はいるし、禅寺に通っている人もいる、毎朝仏壇に向かっているひともおりますが、日本人の民族としての統一的な宗教は決して根付いているものはありませんね。(日本人共通の規範の象徴みたいなもので私が今思いつくのはせいぜい「お天道様」くらいのものですが、最近の若い世代ではこの言葉も死語に近いでしょう)


年末年始お正月は日本人の民族的精神基盤がいったい何なのかという素朴な疑問を思い起こさせてくれる良い機会です。
街中に溢れるハローウインのかぼちゃのオブジェを横目に見つつ、1カ月以上前からあちこちで輝くイルミネーションにあおられて、生れてこのかた一頁も聖書を読んでいないにもかかわらずキリストの誕生日を盛大に祝い、紅白歌合戦やガキのつかいや格闘技観戦の後に、除夜の鐘の音に神妙になり、明ければ神社やらお寺やらで(どっちが二拍手だったかななどと迷いつつ)初詣を敢行する。そして、二日の皇居では「天皇陛下万歳」に数万人が参集します。
ひと月後には「バレンタインデイ」が待ち構えております・・・。


日本人の神仏混合+若干キリスト教の奇妙な宗教的諸儀式、諸習慣にいまさら疑義申し立てする気はありませんし、むしろそれこそが日本人らしさだという意見もあります。しかしながら、この「民族の寄って立つところの思想背景としての宗教」が存在しない状態は決して良いこととは言えないようだと、最近私は思うようになりました。


とりあえず思想背景はさておいて、現実社会の運営の仕組み、国の制度はどうなっているのかを知ることも決して専門家だけの課題ではありません。国の制度について考えることを放棄すれば、例えば老後の生活不安などという現実の問題が降りかかってきます。これは年金問題を見れば明らかです。


日本は議会制民主主義で運営されていることになっていますが、本当にそうでしょうか? 国家は憲法に則って国民を統治していることになっていますが、実際はどうでしょうか? 資本主義と民主主義の間に矛盾はないのでしょうか? 民主主義とはなんなのか。民主主義とか基本的人権とか国と国民の関係などを規定している憲法とは何なのか? 
これらのことを国民一人一人がそれぞれの考えを持っている状況は理想的と思われますが、現実はそれとは程遠い思考停止状況のように思えます。


民主主義とは国の主人は国民だということ、その主人である国民が民主主義を理解していない、考えていないのだとすれば民主主義などあるはずがありません。
「仏を彫って魂入れず」の悲劇的状況に今の日本はあるようです。
近代的な政治形態、組織体制、統治制度を作っただけではその本義は実現不能、大切なのは人間のエートス(「エートス=行為態度」)なのだ、という基本的認識に立って、正当なる学問を追求し続けた天才学者、小室さんの書籍を読んで、この「エートス」なるものについてもっともっと深く知りたいと思うようになった私です。


そもそも、日本は近代国家なのだろうか・・・最近様々な分野で噴き出し続けている日本の制度腐敗問題に日々触れるにつけ、こんな基本的な疑念を抱き始めている人にこの本は特にお勧めします。図書館でも見つかるはずです。ぜひ読んでほしいと強く思います。