独立FPの独白ブログ

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実は恐ろしい企業年金の実態

日航年金、減額説明会 ハードル、どうクリア
日本航空企業年金減額問題が山場を迎えた。日航は23日、減額案を現役とOBに提示したが、年金債務の大幅圧縮を実現するには、OBの3分の2以上の同意が必要なうえ「一括受給」する人が増えないよう説得する必要もあり、ハードルは高い。積み立て不足に悩む他の企業も日航の年金減額の行方に注目している。【24日:毎日】


JALの経営再建にからんでこのところ盛んに報道されているのが企業年金減額問題です。
サラリーマン(主に大手企業)の老後生活保障の柱のひとつになっている企業年金については、その実態を知らない人が多いように思います。私は保険や年金のことである企業の現役社員さんと話した際に、びっくりしたことがあります。それは、「うちの会社の企業年金は4.5%が保証されているんだよ」という話でした。


企業年金であれ公的年金であれ、およそ年金支払いのための資金の運用に関しては、その社会的影響などからしてどうしても堅実な運用が要求されますから、ハイリクスハイリターンの株式投資よりも債券運用を主体としたローリスク運用になるのがほとんどです。(多分)


年金運用の利率(年換算の収益率)の変化は、公共性の高さから同じように堅実運用が求められる生命保険会社の予定利率の推移と似通っているはずです。(実際に企業年金資金の運用を請け負っている生命保険会社も多く存在します)
バブル期に6%超であった生保の予定利率が概ね2%を下回ってしまったのは平成11年ですから、もう10年も前のことなのですが、前記の4.5%利率保証という企業年金の話を聞いたのはちょうど10年くらい前のことでした。
すでに資金運用環境は1%、2%の時代になってしまっているのに、年金制度上はその現実に合せるということができずにずるずると時が経過するばかりだったのでしょう。


企業年金はその会社の就業規則、報酬制度、退職金規定などの一連の制度の中に位置づけられているにもかかわらず、現実に支給されるべき年金の資金が実際にどのように管理されどんな手段で運用されているのかということは、実は全く別の問題であるようなのです。
つまり、退職者に支給される年金は10年間毎月10万円などど決められているとしても、その元手となる資金は5万円しか払えないレベルでしかない、などと言うことが現実には起きているようなのです。


年金に限らず、退職金制度においても、規定上払うことになっている金額に見合う資金準備が実際にはできていないという企業も実は非常に多く存在すると言われています。人が良いというのか杜撰というのか、どうにも不思議な実態です。(中小企業の世界では「退職金倒産」という言葉もあるのです。)


JALの企業年金は、退職金を全額受け取らずに一部を年金受け取り方式にしたものも含まれたり、実際に現役時代に社員が積み立てていた資金が原資となっている年金もあったりなど、色々な種類が混在しているようなのでことはより複雑らしいのです。
しかしいづれにしても、会社が経営破たんして消滅してしまったとすれば年金の受け取りも現実不可能となるのですから、どう考えても一定以上の犠牲は止むをえないと思います。気の毒ですがそれも資本主義社会のリスクのひとつでしょう。


年金と言えば周知のとおり、厚生年金、国民年金では噴出する諸問題がいっこうに解決できませんし、そして民間の生命保険会社が破たんした際に大きく減額された個人年金のこともあり、決して他人ごとではないのです。 
「年金」といえば「自然に湧いてくるかの如く」いつまでももらえるものという勘違いだけはしてはいけませんね。