独立FPの独白ブログ

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自分で考えるための読書(8)〜政治は他人事じゃない

若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)

若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)


「人間の覚悟」五木寛之氏が説く「これから暫く日本社会はウツ的状況が続く」と言う主張に、上り坂だけが人生ではないことに気付かされました。ウツ状況を覚悟するとの考え方は、右肩上がりの経済成長神話を信じ続けてバブル再来を待ちわびるよりもよほど現実的であると思いました。
国家は国家のためにあるので、国を思う気持ちは良いが国家を当てにしてはいけないという警告も、人間が年を重ねボケて行くことにも意義を感じるのがまっとうな人間社会という主張も含めて、大変説得力があるように思いました。(12月28日に紹介)


宮台真司氏の「14歳からの社会学」で、人間の幸福はひとえに「社会との関わり方」をどうするか、どう考えるかにかかっていることを再認識しました。社会的動物であるところの人間は「社会からの承認」を得て、できることなら「社会からの賞賛」も確保できるなら、程度の違いはあれ皆がそれなりに幸福な人生を歩めるように思います。そうした「社会について考える」事始の良書でした。(1月2日に紹介)


さて、我々を包み込んでいる日本の社会ですが、多くの社会の機能が失われ続けていて、どうもこのままでは危ないようです。世の中を覆っているのは「生きズライ社会」を象徴するような出来事だらけです。
生きズラサを是正し幸福を感じられるような社会を造るのは神でもなければ独裁者でもないはず(と私は考えます)で、我々庶民が社会の枠組みの造り手として参加することこそが「民主国家」の基本です。


そしてそれを現実化するための大きな大きな要素が「政治参加」でしょう。ところが学生時代に我々が教えられた「政治経済」やら「倫理社会」やらの科目の実態は、とても庶民の生活とはかけ離れた別次元の知識のようでありました。(一応の)民主主義国家において(一応)民主的な社会に出てゆく直前の若者達に本来教えるべきこととは「いかにして政治参加をして国を造ってゆくのか」ということのはずなのに、社会科学の断片知識を並べるだけのカリキュラムしか用意されていない。その理由について山口二郎教授は・・・

文科省の役人をはじめとする保守的な大人たちが、若者に民主政治を支える公民になってほしいという建前を並べながら、実のところ、若者に政治について関心を持って欲しくないと思っているからである

・・・と言い切っています。
「政治のことは分からない」で中年になるまでノンポリを通し続けてきた私だからこそ、この指摘には合点がゆくのです。


この本は「14歳からの社会学」と並べてすべてのノンポリ日本人の必須科目にしたいくらいの必読書と思います。
可能な限り専門用語、学術語を排して、生命の安全暮らしの安定を確保し、歓びを感じ希望を持てるマトモな社会の構築のために政治参加をしようと呼びかけています。


青年に語り掛けるような気持ちで書かれたと思われるこの本に、私は熱血政治学者のタマシイを感じ、最後のほうでは泣きそうになったものです。
政治学者の本で泣けるなんて・・・。山口二郎氏、素晴らしいです。