独立FPの独白ブログ

この世界を少しでも美しい姿で後世に引き継ぎたい!

東野圭吾の《薄めの》傑作


容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

「自分で考えるための読書」というテーマで紹介しているのは主に経済、社会、思想、政治関連の本ばかりですが、最近の私の読書傾向としては、ミステリなどのエンタメ本と社会科学系の新書とを2冊重ねて持ち歩き(時々3冊だったりして)、平行して読んでいる状態なんです。やはり小説も読んでいないとなんだか気分が治まりませんから・・・。


そんな私がここ数ヶ月で読んだミステリ本で出色の面白さだったのが、この『容疑者Xの献身』です。直木賞受賞作だというし、単行本発刊時からの評判を知っていたので文庫化を心待ちにしていた東野さん作品です。久しぶりの東野作品でしたが、私の読んだ範囲ではベストに近いと言えるほど大いに満足させてもらいました。面白かったです。(『放課後』と競るかも?)


やたらと長く(文庫本もまるで国語辞典なみの厚みだし)、めっぽう暗い印象のここ数年の東野作品には少々ヒキ気味だったのですが、この小説はそうした不安を吹き飛ばしてくれる私にとっての快作でした。
軽くは無いけどさほど重くもなく、そんなに暗くは無いけどちょっとシンミリさせられる、「適度な」緊張感が最後まで破綻せず、読み応え十分でした。


本作は幾つかの短編がすでにTVドラマになっている探偵ガリレオシリーズの初の長編です。映像のほうは福山雅春主演で堂々映画化もされましたね。福山氏には興味ないけれどDVDになったら見てみようかしらとは思います。
まあしかし、本作品の主人公は福山演ずる探偵ガリレオではなくあきらかに犯人(容疑者X)のほうだと思いますので、福山雅春のイメージでこれを読む人は相当にガックリ(というか拍子抜け)するでしょう。
「それは面白い!」とかいう流行の台詞とはほとんど無関係であり、テレビドラマや映画のブームからは完全に独立して面白く読めるきちんとしたミステリ小説ですね。(こっちがモトだしね)