独立FPの独白ブログ

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ああ無常・・・


生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

【行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しく止とゞまる事なし。】
鴨長明作の古典文学『方丈記』(ほうじょうき)の出だしの一節です。
古典文学の類は一冊も読んだことのない私でも、方丈記のこの有名な一節には親しみがあります。(白土三平忍者武芸帳」でも無風道人がつぶやいていた・・・)
 

物事は常に移り変わり続けているのだという「無常観」は古くからの日本人共通の心情のひとつでありましょう。
すべてのものは常に流れの過程にあるのであって、だからこそ大きな流れの中での一瞬ともいえる偶然の出会いを大切にし、大きな流れのなかの一粒の存在でしかない自分を包み込む大自然に敬意を払い、自然のすべてに神を感じるような日本人らしい心根の基礎にもなっているように思われます。


この「すべては流れている」という考え方が、実は生命科学の分野での大きな成果としてすでに数十年も前から存在していたことを、この本を読んで初めて知ることになったのです。
『生命とは動的平衡状態にある【流れ】である』
という定義を中心に、DNAの構造や機能、個体と食物の関係、生態系のこと、そして、化学実験の現場でのなまなましい裏事情なども紹介され、読者は生命の本質の解明に向かって進んでゆく1種のミステリとしての楽しさも味わえ、大変変興味深く読むことが出来ました。


科学モノとしてはかなりのベストセラー本らしいこの新書は数ヶ月前かから気になっていたのですが、最近になってようやく読了することが出来ました。目からうろこが落ちるの表現がまさに当てはまる、これぞ読書の醍醐味です。「知ると知らぬは天地の差。ああ、読んでよかった、知ってよかった、友人知人にも報せたい!」と強く感じる本にはそうそう出会うものではありませんが、この本は私にとってはそんな貴重な本のひとつとなりました。


科学者であり、かつ文章力と感性に富んでいるという、この著者の貴重なる才能に感動した私は、著者の本を続けて2冊買ってしまいました。『もう牛を食べても大丈夫か』と『ロハスの思考』についてはまたあらためて紹介します。