独立FPの独白ブログ

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目からウロコ!驚愕の経済学批判書


思い起こせば30数年前、大学商学部に入学したての新緑の候、先ずはじめに挫折感を味わったのは「経済原論」の講義でした。
財・サービスの総供給をY、消費をC、投資をI、政府支出をGとすると、財市場の需給均衡条件は、Y=C+I+Gと表せる・・・・・
えええっ、数式(方程式?)が出てきちゃったわあと驚いているうちに、こんな足し算はまだ序の口であることが教科書をぺらぺらめくるとすぐに明らかになりました。


限界効用逓減だの均衡だのといった高等(私にとって)数学を駆使したいくつもの「なんとかの法則」の記述と、とても現実の人間社会の反映とは思えないような複雑怪奇な曲線グラフの数々・・・・・あっと言う間に「駄目だこりゃ」と言う心境となりました。だって、そもそも数学が苦手だから文系進学を選択したのに・・・・。


というわけで、それ以来、所謂「経済理論」というものは、私にとって一歩も足を踏み入れる気になれない未開のジャングルと化したのです。どうせ経済理論などは人間心理を無視した机上の空論であろう、などと犬の遠吠えのごとき情けない不貞腐れ状態が長年続いておりました。その経済学を真っ向から論理的に批判する本に出会いました。「生きるための経済学」という書名も「選択の自由からの脱却」という副題も私の最近のもやもやを解決してくれそうな予感をもたらし、新聞広告を読んで即日買いに行きました。


経済学からスタートして諸学分野を渡り歩いたという著者は、市場経済理論の根底を支えているいくつかの前提条件そのものが、世界を律している物理学原理に反しており非常に非科学的であると断じます。
市場主義経済学に思想の趣をもたらしている「市場こそが自由を守る」という主張への疑義を唱えます。そして「選択の自由」という希望は実は現代社会を呪縛しており、人類をある種の危機的状況に追い込んでいると警鐘を鳴らしています。


格差拡大、生活不安、老後の不安、生甲斐喪失、自殺の増加、人間関係不安などなどに囚われ続ける今の日本人にとって最も大切なことは「生きていることを楽しむ気分」ではないかと私は思っています。そして全ての学問は人間が「生きることを楽しめるようにする」ためにあるべきではないか。
そんなことを感じ、自由とは何かという基本的な疑問が増大し、今まで敬遠しつつもなんとなく憧れていた「哲学」にもちょっと触れてみようかしらと思うに至りました。


市場競争原理とか機会の平等とか自由主義という概念に対して、なんとなくおかしいなあともやもやしている人々にお奨めです。
中盤あたりから自我の吐露表現が多くなりテーマが拡散したように感じ、ちょっと挫折しそうになるかもしれませんが、最後まで読むと心が晴れると思います。