- 作者: 多島斗志之
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
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「4冊目も当たり」というタイトルで多島斗志之さんの著書(クリスマス黙示録)を紹介してからほぼ1年が経ちましたが、創元推理文庫からの新刊「白楼夢」が5冊目の多島本となりました。(その前に1冊短編集が出ていますがこちらは未読です)
有り難いことに今度も読んで正解の当たりでした。
この人の物語作りというのか舞台作りの巧みにはいつも感心するばかりです。(希代のストーリーテラーとでも評するのでしょうか)
この小説は、時代も地域も現代の日本に住む私には夢のように遠い1920年のシンガポールが舞台の不思議な設定ですが、少しばかり読み進むうちにすっかりそのエキゾチック且つノスタルジックな雰囲気に圧倒され、まるで息もつかせぬアクション映画の世界に入り込んでしまったかのような臨場感を感じます。
実はこの小説を読んでからすでに3ヶ月ほど経過しているのですが、あの物語の舞台である南国の空気、湿度、においやホコリ混じりの風などの感覚が、まるで旅行体験ででもあるように今も思い起こされるのです。ミステリとしての謎解き、ハラハラドキドキ感のある小説ではありませんが、非常に引き込まれる冒険譚という趣のユニークな作品だと思います。
私はもう断然、多島斗志之ファンになりました。
大変に寡作の作家さんなので中々欲望が満たされないのですが、創元推理文庫の旧作発掘出版企画の今後の展開に期待したいものです。