独立FPの独白ブログ

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■これが民営化というもの

グッドウィル・グループ折口雅博会長は11日、厚生労働省から行政処分を受けた子会社で訪問介護大手の「コムスン」(東京都港区)の事業について、「同業他社を中心に一括譲渡が望ましい」と述べ、外部に売却する意向を示した。
 同日、読売新聞などに対して述べたもので、折口会長は厚労省と協議しながら譲渡先を判断するとしている。
 ただ、コムスンは2000を超す事業拠点を持ち、利用者も約6万5000人と多いため、現状では全事業の一括譲渡に応じる受け皿を確保するのは難しい見通しだ。(6月11日 読売新聞)


厚労省が起死回生の逆転狙いで力を示した感のあるコムスンの不正発覚事件から沢山の問題が見えてきます。
「介護ビジネス」という商売と「介護保険」という国(行政)の制度が現場ではどのような関係にあるのか。「介護サービスの質の確保」と「ビジネスとしての採算性」との間でどのように折り合いをつけているのか。このあたりは、実際の現場にいる人たちにしか分からない事情が沢山あることでしょう。


ただ、私の見聞きしている限りにおいては、介護ビジネスとはそう簡単に儲けの出せるものではないらしいこと、介護サービスに従事する多くの人達は労働対価のかなり低い状況で頑張っているらしいこと、これだけはどうも間違いないように思います。
他人の生活の基本部分を支えるという尊い仕事に従事する人達が、自分自身の生活基盤を向上させられないなどということがあっていいのでしょうか。


思えば低所得の病人や要介護者や生活困窮者を支える仕事が、「大いに儲かる」訳が無いことなど当たり前のことです。
それでも、使命感とか遣り甲斐を重視して厳しい職業をあえて選ぶ人達には頭が下がる思いですし、こうした人達が一定レベル以上に報われるべきだと強く思うのです。


そうした問題をなんとかするためにこそ「国」「政府」「行政」があるはずですが、そんな国がナントカするべき部分にも市場原理が導入される傾向が続いているのです。あまり儲からないが市民生活の基本を守る大切な仕事、採算度外視でもやるべき仕事の分野にすら市場原理が導入されつつある。それが今の日本が進んでいる方向です。お役所仕事のコスト意識の無さが徹底的に批判されるのは正しいとしても、極端に反対側に走ってしまっては元も子もないと思うのですが・・・。


「市場原理主義優先」を中心に据える『ネオリベ改革』推進の方向に大きく舵を切ってしまった小泉時代の「構造改革」「なんでも民営化」の影響が、大変わかりやすい形で我々の目の前に現れた、非常に象徴的な現象なのではないでしょうか。
「小さな政府の実現」とは基本的に「全部自分でやってね」ということなんです。