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■生保逆ザヤ解消へ

生保、配当金を大幅増 運用環境好転し「逆ざや」縮小(2007年05月10日朝日)

 日本生命保険など大手生命保険各社は、死亡保障保険など今年度に支払う個人向け保険の配当金を大幅に増やす方針を決めた。日本生命が前年度の約9倍にあたる460億円と17年ぶりのバブル期並みの高水準になるほか、各社とも積み増す。運用環境が好転し、契約者に約束した利回りを運用成績が下回る「逆ざや」が縮小しているためだ。
 配当金の増加は、第一生命保険が前年度より75%増の70億円、住友生命保険が約2倍の65億円、明治安田生命保険が約18倍の110億円となる。
 株式や債券などによる資金運用が好調なのに加え、生保業界は保険金の不払い問題を抱えており、増配により契約者の批判をかわす狙いもありそうだ。 (10日朝日)


このニュースには突っ込みどころが山のようにあるけど、今日はひとことだけ・・・。
逆ザヤ縮小、増配の主な原因は運用収益の改善だというので、それは良いことと言えるでしょう。
しかし、私はつい思い出してしまうのです。
たとえば昨年社会保険庁が年金加入率の向上のために行った「分母を減らして結果としての率を上げる」という裏技の存在を。


生保の予定利率は昭和51年から平成5年までは概ね5.5%〜6.25%で推移していました。
しかしバブル期の6.25%をピークにバブル崩壊後のデフレ進行とともにズルズルズルと下がり続け、現在は1.6%前後になっています。
つまり平成8年に2.75%に落ちるまで、生保の利率は非常に長期間にわたってほぼ4%以上であったのです。


この頃に契約した生命保険は、(特に終身保険や養老保険や年金保険など貯蓄性のある保険は)業界人の間では「お宝保険」などとも呼ばれ、今では貴重なる高利率の保険であったわけです。そのお宝保険は、保険会社にとってはまさに逆ザヤを生む元凶のひとつなわけですから、こちらサイドから見れば「お宝」ではなく「お荷物」であると言えますね。
お荷物を減らして、利率の下がった新商品が増えれば増えるほど逆ザヤは縮小するはずですね。


「時代の変化に合わせて」、「新しい社会の要請に照らして」という大儀名分の元に、新時代にふさわしい(??)新商品を開発して、このお荷物を新商品に切り替えさせること、少しでも逆ザヤ保険を減らすこと、これこそが営業の究極の指名であったのではないかと、私は想像するのです。
「あの頃」の終身保険をどうしたわけか新たな低利率の新商品に切り替えてしまって、後でどうもおかしいと気がついたという保険相談を私は沢山持ち込まれています。お宝保険のお宝の部分は温存しておいて、残りの部分を見直す方法もあるはずなのに、なぜか根こそぎ取り替えてしまう見直しをしてしまったという相談を数多く経験しているのです。


新商品への切り替えも結構進み、つまり逆ザヤ保険を減らし、運用環境も若干よくなり、上記のニュースのようなことになってきたのでしょうか?
今後は、バブル期に良く見られたような「保険の内容自体ではなく、配当の良さでアピールする営業手法」がまた出てくるのではと少々懸念します。
なにせ、生命保険を販売商品に加え始めた銀行が金利を上げる気配はなさそうです。「預金よりイイです」と言っては「配当付きの生命保険」が沢山販売されるのかと思うと、私はまたまたため息が出るばかりなのです。