独立FPの独白ブログ

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■まだ出てくる不払い問題

生保不払い5年で284億円、3大疾病特約など25万件
生命保険会社38社は13日、2001〜05年度の5年間の保険金不払い調査の結果を金融庁に報告した。不払い件数は計25万件、不払い総額は284億円にのぼった。
 このうち、日本生命保険など主要生保12社だけで23万件、267億円に達した。保険金が支払われる可能性があったのに、契約者から保険金の請求がなかったとして支払わないケースが目立った。大半の会社は調査が終わっておらず、各社が最終的に調査を終える6月末には、不払い件数は計100万件を超える可能性がある。
 金融庁は最終報告を踏まえ、生保各社に対し行政処分に踏み切るのは必至とみられる。


保険会社の(というようりも保険業界の)保険金不払い問題報道に触れて、保険に深く関わる者としては考えさせられることが非常に多いのです。言い出せばきりが無いので今日は一言だけにしておきます。


私が以前所属していた元・外資系生保、S生命では、営業マンのうち一定以上の実績保有者(言ってみればある程度以上の経験者)の営業マンによる定例の委員会が組織されていました。本社事務方が営業現場の意見を取り入れるという主旨でスタートしたこの会議は業務分野で分類された契約事務、保全、販売企画などの各委員会があり、私は保全委員会に数年関わりました。保全というのは各種変更手続きや保険金、給付金の支払いを含めた、契約後の顧客に対する様々なフォローの総称ですが、言わばこれこそが保険の本来の役割の部分ですね。


この委員会では「営業支援以前に保全業務の迅速化、精密化、正確化にもっと注力してほしい」と言う主旨の発言を何度もした記憶があります。お客様に一生面倒を見させて頂きます、と宣言したものの、本当に完全にフォローできるのだろうかという漠然とした不安があったからかもしれません。
業界では「保険という商品の本来の役割は保険金の支払いである」、とか「保険の納品は支払い時である」というようなことがよく言われます。よく言われるということは、ウラを返せば、あえてそのことを強調しなければ「ついつい忘れがちになる」危険性があるからでもあります。


保険営業の現場で、仲間内で日常的に語られていることは、多くの場合に「いくら契約を獲得したか」であり、「どれだけお支払いをしたか」ではありません。営業の世界ではどの分野どの業界でも「いくら稼ぎ出したか」「どれだけ契約を獲得したか」こそが最重要であるのは普通のことと思います。しかし私はいつも言っていることですが、保険の世界は少し違っているべきだと思っています。いくら売れたか、何件契約したかについて考えるよりも、どれだけ役に立つ商品を提供できたか、いざという時に本当にお客さんを助けられるのかということに、より注力する必要があると思うのです。そうした思いから、上記の委員会も私が選んだのは保全の分野でした。


保険商品はどれだけ稼いだかではなく、どれほど役立っているのかが優先されなければならない商品の代表だと私は思っているのです。本質を理解したうえで本当に良い商品を提供し続ければ儲けはあとから着いてくるということを「キレイごとではなく本気で信じているべき業界」だと思うのです。しかし、どうも現実はそうではないようです。普通の営業と同様にあるいはそれ以上に「営業成績至上主義」に陥っている保険屋が多いように感じています。


報道でも言われているように、「保険金請求を受けた時に、他にも支払うべきものがないかどうかを検証するシステム」が今まで無かったという事実には驚くばかりですがこれが実態です。
契約獲得を援護する商品開発の目玉は「何となくお得な」「断然安い」などのイメージ戦略であったり、販売チャネル対策としての「手数料率アップ」であったりするのが現状です。


行政庁の指導によって、ではなく、賢い消費者の厳しい選択眼にさらされて、良い会社が選ばれ発展してゆくのが健全な経済社会だと思います。
競争の目玉が「お客様に喜ばれる商品や仕組みの開発と実行」であり、そうした努力を地道に積み上げてゆこうとする保険会社だけが生き残り、成長するようなまっとうな世界になってほしいものです。