独立FPの独白ブログ

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■小三治さんの「鹿政談」


落語は元々、観て、そして、聴いて楽しむ演芸なので、噺家の顔の表情や身体の動きや仕草が分からないCD音源などは高座の再現とは言えないかもしれません。しかし、好きな噺家さんの落語の映像ソフトがそんなに沢山あるものでなく、また、夜寝る前のひと時を落語を聴いて過ごすなども多いので、音だけのソフトで楽しむのが通常ということなります。


思えばクラシックのオペラなどレコードやCDで楽しむというのも立派な文化であるわけですし、サッカーなど動きの激しいスポーツでさえ、ラジオなどで音だけで楽しむこともできる、このあたり、人間が持つ想像力という能力のお陰なのだろうと思います。


しかし、久し振りにビデオで観た柳家小三治さんの「鹿政談」は映像があって良かったと感じられる噺でした。激しい動きや表情の大きな変化があると言うわけではないのですが、登場人物の微妙な表情の変化が大きくものを言う演目です。
鹿を傷つけると大罪に問われたという江戸時代の奈良で、過って鹿を殺してしまった豆腐屋の主人が裁判を受けることになります。今風に言えば「人権派」の裁判長である奉行が、不運な一庶民をなんとか救おうと知恵を絞ります。奉行が台詞の内容とは別に(言葉とは裏腹に)言外の意味を伝えようとする場面などは、やはり顔の表情で現されるわけですから、この話しは映像がベストなのでしょう。


このように映像があってこそ面白さが増すという演目などもあるので、なるべく寄席に行くとかビデオやDVDソフトを借りて観るとか、一度は機会を捉えて映像を見ておいたほうが、落語のCDもより楽しめるという訳です。
この鹿政談の映像はTBSテレビの落語特選会の10年以上前の録画です。しばらく休んでいたこの番組は最近の落語ブームもあって復活しており、TBSには感謝しています。
できれば月1ではなく月2回の放送にしてくれるとうれしいのですが。