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■「死亡推定時刻」は徹夜本!

死亡推定時刻 (光文社文庫)

死亡推定時刻 (光文社文庫)


★先日のブログで冤罪事件について触れたばかりですが、実は偶然にも週末に読み始めた本が冤罪テーマを扱った小説でした。朔 立木(さく・たつき)著・「死亡推定時刻」という長編ミステリです。
「現役の法律家である」と紹介されている作者自らのあとがきにはこう記されています。


【この作品をフィクションと呼ぶのだろうか。作者としては、ドキュメンタリーあるいはリポートと呼びたい気持ちがある。全体の筋書きは架空のものだが作品を構成する膨大な細部のほとんどは、実際にどこかに存在したものだからだ。】
あまり金にならず、しかも勝ち目の薄い事件をいとも簡単に右から左へと済ませてしまう心なき弁護士や、真実の追求よりも組織のメンツを最優先する警察や検察の人物たち、組織の掟となんとか折り合いを付けながら正義を守ろうとする検事や警察官や弁護士たち、そうした人々は実際にいるのだとも述べています。長年刑事事件を扱ってきたという作者はおそらく誠実なる弁護士なのであろうと思われます。


ほとんどドキュメンタリーの感があるこの小説では、鹿児島県議会選挙の冤罪事件で報道されたような「強引な自白強要」、「被疑者を追い詰める悪魔のテクニック」が濃密なリアリティーをもって描かれて、読む者は確かに現実あり得ることに違いないとの確信を得るでしょう。
警察の操作手順や裁判のための手続き、準備などかなりの専門知識の記述や、専門用語などが含まれるのですが、それらは非常に平易にわかり易く書かれていて、このあたりに、作者の自慢話的経験披瀝などではなくて、本当のことを一般庶民に伝えたいとの強い想いを感じることが出来ます。


なにしろ、遅読の私としては異例な速さで、480頁を週末のたった一昼夜で読んでしまったほどの「久々の一気読み徹夜本」でした。ドロドロし過ぎず、感傷的になり過ぎず、かと言って渇き過ぎでもなく、非常にバランスのとれた読みやすい面白いミステリ小説にして社会勉強本であります。今日もある本屋で「売れてます!」の店員さんの推薦カードと共に平積みになっていました。私も推薦します。