独立FPの独白ブログ

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■気になる伊坂幸太郎

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)


小説にも「年相応のもの」があるのではないか、そんな感じを抱くのが伊坂幸太郎氏です。
1年くらいまえに「オーデュポンの祈り」をその題名や解説から得たファンタスティックなイメージに惹かれて衝動買いをしたものの、なぜか途中(カカシが死んだあたり?)で挫折してしまい、これならどうかと「ラッシュライフ」を読み始めても数十ページでまた挫折しました。


私は長年SF小説も守備範囲ですので、あり得ない世界についてゆけないわけでもないし、理屈がわからない展開は苦手だと言うわけではありませんが、どうもこの人の小説には入ってゆけませんでした。ようやっと最後まで読み終えたのは「陽気なギャングが地球を回す」でしたが、あまりぴんと来るものがなく、諦めかけていたところ、最近文庫化されたのを知ったのがこの『アヒルと鴨のコインロッカー』です。


吉川英二文学新人賞受賞作にして創元推理文庫から発行の本書には、今度こそはと大いに期待をして買ってきたのでした。結論はと言えば、読んでみて良かったです。私は伊坂幸太郎を読んだよと言っても誰にも文句を言われないような作品なのではないか(つまり代表的な作品のひとつではないか)と思います。
しかし、読んでよかったとは思うものの、楽しかった、面白かったというのは違い、感想として残ったのは「暗い」「寂しい」「やりきれない」といった、どんよりとした寂寞感、やり場の無い孤独感というのか、とにかく心と身体がひんやりとしてしまうような感覚です。
いや、そうではなくて、多くの登場人物の感性が自分とは掛け離れた世界の感じ、というのか、ううむ良くわかりません。言葉が見つかれません。


とにかく、一度も感情移入することなく、なにか疎外されているような感じがして、つまりそれを言葉にするならば「年相応ではない」という感じなのです。
年齢の隔たりを超え、若者と大いに話しが盛り上がることがあったとしても、中年過ぎの私どうしても入ってゆけない世界が厳然と存在する、そしてその世界からは参加資格をもらえない、というような感じなのです。上手く言えませんが。


若い人達を中心に大いに売れた新人小説家の作品が結構ありますが、そういうものを読んでみるとなんらかの答えが分かるのかもしれませんが、しばらくそういう気にはなれません。
そういえば、最近の音楽ではなかなか癒されない自分に気付くことも多い今日この頃です。小説に限らず、音楽にしろ演劇にしろ芸能、芸術にしても、年齢に応じたものというのはやはりあるんだろうなあと想像した次第です。