独立FPの独白ブログ

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■北村薫さんは素敵です


ここ数年、時の過ぎ行く速さに驚かされ、年末年始にも時間と人生との関わりについてなんとなく考えてしまうことが多く、ブログなどにも何かと書いてきたわけです。ハイデッガー「時間と存在」を読むところまでは行きませんが・・・。
色々と考えた挙句、『時の速さに戸惑うのはもう止めて、その日その時の仕事と暮らしに誠実に向き合い、毎日毎日を精一杯生きる』これしかなかろうと思うに至りました。


そんな気持ちに100%フィットする小説を年末年始にかけて読みました。昨年末に一部を紹介した北村薫氏の「時と人の3部作」です。はじめに読んだ「ターン」に続いて「リセット」を読み、間に1冊別シリーズの北村作品「秋の花」を読んでから、やはりどうしても気になって読みはじめた「時と人」3冊目がこの「スキップ」でした。「ターン」では時間が無常にも先に進まなくなりました。「リセット」では時を超越した人間のタマシイの存在に涙しました。そしてこの「スキップ」です。


スキップは17歳の女子高生がある日突然42歳の高校の先生になってしまうという設定ではじまる物語です。この25年間を跳んでしまうことが「スキップ」なのですが、その後の様々な出来事の末に、主人公が到達するあらたな心境を象徴する意味にもなっています。見事です。


北村薫というひとはスキップの主人公と同じく高校の国語の教諭であった経歴をもっています。教師である主人公がその教え子達に向ける眼差しや、文学への思い、言葉や色彩に対する感性、人間を真摯に見つめる姿勢などは、自身のそれらをそのまま小説の中にぶつけているように感じます。きっと素敵な先生だったに違いないと想像してしまいます。


ストーリー展開自体にのめり込むと同時に、そのなかで登場人物が見せてくれる「優しさ」や「勇気」や「若さ」や「聡明さ」や「素直さ」にいちいち感動を覚えながら読み進みました。
これから北村薫さんを読んでみようと思っている方には、まず「スキップ」からとお薦めしたいです。直木賞候補にもなったこの小説は味わい深い名作だと思います。

スキップ (新潮文庫)

スキップ (新潮文庫)