独立FPの独白ブログ

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■保険業界の原点回帰

昨年春、ある大手生命保険会社で不当な保険金不払が発覚して金融庁の厳しい処分を受けました。今年は大手損害保険会社の数社で相次いで不当な保険金不払が発覚して、私が代理店契約をしている損害保険会社でもこの夏に約2週間にわたって営業停止処分を受けました。
これらの問題は単に個別の会社の不祥事ということには止まらず、自社業績確保のための販売競争ばかりに注力してしまい、顧客の方に顔を向けていないではないかという、業界全体の姿勢の問題と捉える言説も噴出しているようです。


保険営業の世界で17年間を過ごしてきた私としても、保険業界全体の姿勢については大いに思うことがあります。我々保険営業で生計を立てている者は常に新規契約を獲得してゆかなければ生きてゆけません。あえて単純に言ってしまえば、新たな契約をしてくれる人のほうに意識が向いてしまう傾向があります。保険契約が決まれば、感謝の言葉を発したその瞬間から営業マンの意識は次のターゲットへと向います。


そういう傾向を如実に表していると思われる私が大嫌いな言葉が「契約を獲る」という言い方です。大事なお客さんに対して「獲ってしまう」という表現には大いに違和感を覚えます。もちろん何の悪気もないのですが、この言い方が平気で使われていることは、やはり保険営業の姿勢の問題を繁栄していると言わざるを得ません。
保険契約の本質を見るなら「契約を結ぶ」が正しい言葉だと私は思うのです。
保険を契約するということはお客さんの側にとっては、「安心を購入する」ことであり、その安心の根拠は「イザという時には確実に保険金が救ってくれる」ということなのです。ですから保険営業にとっての契約締結は最終目的ではなく、サービス開始のお約束をしたということであるはずです。
私は契約時には「このご契約は私とのライフプラン顧問契約でもあります。どうぞ末永くこき使ってくださいね」と言うようにしています。


金融庁が処分を含めて保険業界への厳しい姿勢を見せていることに対応して、業界では様々な施策を打ち出し、手続き事務関連の再教育や、定期的なコンプライアンス教育などが頻繁に行われるようになっています。また、保険金支払い漏れを防ぐべくシステム上の対策もようやく着手されています。
それはそれで至極当然の流れですが、最も緊急な課題でありかつ最も重要なことは、「保険の役割」というそもそもの原点への回帰なのだと強く思います。


私は以前から保険を単なる商売のネタと考えるような姿勢は絶対に無くすべきだと思っています。とりあえず金さえ集めればまあよしとするような保険会社がもしあるとすれば、それこそ市場の原理で早急に淘汰されてしまうべきだと思っています。正しい保険選びをする消費者がひとりでも増えて行くように、保険営業として、FPとして一層襟を正して行きたいと思う今日この頃です。