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独立FPの独白ブログ

この世界を少しでも美しい姿で後世に引き継ぎたい!

⑮ひとは何のために働くのか

元・外資系生保マンの追憶
  • ひとは何のために働くのか?

サラリーマンから畑違いの保険営業へと転職したあの頃の思いを時々懐かしく思い出すことがあります。あらたに挑戦する仕事の魅力として私が挙げていたことは、まずは自分自身の能力が大きくものを言う世界であろうということです。
以前の仕事では営業でお付き合いするお客さん自身も大きな組織の一員の立場ですから、ある人が私というひとりの営業マンを大いに気に入り信頼して下さったとしても、必ずしも成果に結びつくとは限りませんでした。
保険営業の場合は(一部の大企業向け特殊契約以外は)お客さんも一個人であり、そのひと自身が決定権者であるわけですから、個人対個人のピュアな世界で自分自身を発揮してゆけるだろうと感じました。


また、コンサルティングセールスを標榜している保険会社の営業なら、保険そのものの知識だけに止まらず、経済環境や社会情勢、税制ほか各種の制度など生活をとりまく様々な分野の情報や知識を勉強することが、お客様への貢献に直接役立つことになります。
お客様の利益の最大化に精魂傾けて頑張ることが信頼を高め、結果的に自らの収入に跳ね返ってくる、つまりコンサルティングマインドを磨いてゆくことで自分も成長し、お客様も繁栄をするという理想の仕事であると感じていました。


そしてその考えは、コンサルティングマインドを大事にしていた川崎支社というまっとうな組織の文化のおかげで、入社後にひとつひとつ現実として確かめられていったのです。(他のいくつかの支社では必ずしもそうとは言い切れなかったようですが・・)


しかし、世の中はじつに色々な人がいて様々な考え方があるもので、私のようなそんな青臭い理想論を本気で思い込んで保険営業マンとなった者ばかりではなく、すべてが転職で入ってくるこの世界には、それこそ十人十色の転職動機があったのです。
実力や真面目さとは関係なく「上司との人間関係だけで決まってしまう人事評価」に嫌気が差して出て来た者、自分の努力が正当に評価されていないことの不満を爆発させた者、職場の人間関係にひたすら疲れて出て来た者、仕事の成果の積み重ねが感じられず刹那的な断片的な労働に魅力を感じなくなって出て来た者、ただひたすら報酬に不満を覚えて出て来た者など、ほんとうに様々なのでした。


ところでS生命では業績の積み重ねに応じて階級が上がってゆきます。階級というのか職階というのか、ともかく4つの級があり、最上級になると事務所内にパーティションで仕切られたり小部屋だったりの専用のスペースが設けられます。(あれって本当にウレシイのかしら、なったこと無いので私にはよく分からん)
最上級になるまでは何か特別な待遇があるわけではなく、私は今日まで頑張ってきましたという証、一種のステータスでしょうか。


基準は基本的に稼ぎの積み上げ保有額で、どんなに大きな契約を獲得しても、それが解約などで無くなってしまうとその分ノーカウントとなります。あくまでも保有額が基準ですので昇格後に積み上げ額が基準以下に減ってしまった場合はあっさりと降格します。降格したからと言っても別に何かを取りあげられはしないのですが、現実には降格はかなり堪えるようです。(私は降格する前に退職したのでOKなのでした)


入社から5年ほど経ち、ようやくたどり着いたコンサルティングLPの昇格研修がありました。(数字だけではなく、人間性とか保険マンとしての中身もキチンとしているべきなので研修をするということなのでしょう。変なひとも沢山いましたけど・・・)
約20名ほどが全国から集まったその研修会最初の自己紹介で、私は少々驚いたことがあったのです。(これが今日の記事の主題です。前置き長すぎ!!!)


約半数の男が「入社の同期ははっきり言って収入のためだった」というのです。
S生命の報酬体系は完全なる成果報酬で稼ぎに上限は無いわけです。頑張れば頑張っただけもらえることが最大の転職理由だったというのはおかしな話ではないわけです。しかし、私のように仕事の社会的意義とかやりがいとか人の役に立つ喜びなどという「あまいこと」を言う者はあまりいなかったのです。支社が違えば随分とモチベーションのあり様も違うものだと驚いたわけです。


そして、もうひとつ驚いたことは、そんなふうに金のために入社してきて、みごと短期間で結構な収入を得るようになった者達が(私は5年かかりましたが殆どが3年くらいでの到達だったのです。つまり私以外はみなやり手の連中でした。)、最近、なんだか大事なのはお金では無いような気がしだした、と多くの男が語ったことでした。


より良い保険を提供したということをお客さんから感謝されること。不測の事態で保険を利用するに際しては適確で迅速な処理をして感謝されること。大切な家族を守る手段である生命保険の正しい考え方を教えて上げられる事。そうしたことで、「ありがとう」と多くの人から言って貰えることこそがこの仕事の本当の醍醐味だと感じるようになった、と言うのです。私は、やはり人間というものは物欲も相当なものではあるけれど、他者から認められる、感謝される、頼りにされるという受容の満足感で大いに喜びを感じる高等な動物であるのだなあと感心したというわけなのです。
お金目的で転職してきた連中も、懸命に仕事をしていると、ひとから感謝されることの喜びに気付くものなのです。


ホリエモンだのムラカミだの、マネーに潜む悪魔に魂を売り渡しかけた亡者候補の人たちだって、人間本来の大切な部分について必ず気付くときが来るはずです。それが社会的生き物である人間のある種の本能なのだと私は思うのです。

そういうことを沢山感じられる人生こそが大いに幸せな人生であるというごく当たり前のことを、家庭でも地域でも学校でも職場でもきちんと伝える努力をしているでしょうか。
そんな理想主義的なことは厳しい現実の前には虚しいものなどと思い込んで黙り込んではいないでしょうか。
どうにも殺伐とした空気が漂い始めている今の日本で、このことはどうしてもあらためて問い直してみるべきだと思うのです。
人はどうして頑張って働くのか?


人はなんのための働くのか?