独立FPの独白ブログ

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⑬生命保険は売らない!

『私の仕事は生命保険を売ることではありません!』


生命保険の販売そのものではなく、生命保険の考え方、選び方、活用法についての正しい情報を提供するのが私の仕事です。・・・というわけなのですが、少々微妙な表現です。。


商品を売るな、自分を売れ、といった考え方は保険に限らずセールスの教育などでは良く出てくるフレーズでもあります。マーケティング学の大御所である村田昭治氏(慶大名誉教授)も「商品を売るのではない、その商品によってもたらされる快適さを売るのである」と以前から言い続けておられます。


商品自体であれ、それがもたらす効果であれ、保険という商品の場合はいずれにしても「売り込まれる不快感」が強く根付いてしまっている業界であるため、販売の現場ではただ売り込むんではないのです、という姿勢はより一層重要な意味を持っています。


私が入社した当時S生命はまだ「S・P生命」という社名で、今から思えばまだ著しく知名度の低い会社でした。セールスの現場で、その知名度の低さを何で補うかということは営業マン全員の課題でもありました。
当時はまだ、大手生命保険会社が潰れるなどと誰ひとり想像するものがないような時代でしたから、「大きいことは概ね良いこと」だったので、小さい会社、新しい会社に対する不安というものは非常に大きな障壁でした。また、とかく分かり難いといわれる生命保険商品が「会社によって大きな違いがある」などと誰も思っていなかったし、実際に商品そのものに大きな違いは無かったようにも思えます。だったら、歴史ある大きな会社の方が安心、と考えるのは自然のことでしょう。


まだ新しく小さい会社だが、その企業理念には素晴らしい先見的なものがあり、その先進のコンセプトに基づいて販売する商品・サービスは間違いなく世の中に広く受け入れられ、それが今後の会社の発展をある程度約束できるはず、ということを切々と訴えたものです。
そのコンセプトとは、「商品のメリットを一方的に売り込み、最終的には、粘り強くお願いして、買ってもらう」お願いセールスを真っ向から否定した、コンサルティングセールス(ニードセールス)による生命保険の提供です。


生命保険営業の世界は現実には「義理・人情・プレゼント」による販売攻勢が主流であり、本来あるべきコンサルティング販売がなされていないとよく批判されています。弱小の新興保険会社としては、従来とは全く違ったきらりと光る新しくしかも優れた商品の提供がどうしても必要だったのです。その新しい光るものがニードセールスです。
その考え方を、一般の人達にどうやって伝えるのか、ここが最大の問題点であり誰もがそのことで色々な工夫を凝らし、様々な言い回し、資料提供などで試行錯誤しつつ頑張っていたのです。その中で登場したのが冒頭の台詞でした。


それでは、保険を売らない保険屋とはイッタイなにものなのか?
営業マンのT氏はいつものように、契約者から紹介されたその知人に会いに行き、時間を掛けてS生命のコンセプトを話しました。先方は、彼の話に熱心に耳を傾け、保険の加入を検討することになったようです。
2回目の面会時にT氏が持っていった生命保険の提案書を見て、そのメリットを十分に確認して新規加入を決断したその人は、T氏にこう聞いたのです、「この保険にはどこに行けば入れるんですか?」・・・・・


保険商品の販売ではなく、保険の考え方、選び方、活用法について懸命になって説明していたT氏の姿勢が、ある意味で正しく伝わっていたとも言えそうですが、彼らの仕事が保険の販売ではない、というのは間違いです。保険の考え方、選び方を充分に理解して頂いた上で、選ばれたその保険を販売し、その後もフォローするのが仕事なのですから、「保険を売らない」かのような誤解は与えるべきではありません。


保険の話しを聞いてもらうための電話でのアポイントで、「保険を売るわけではありません」とある新人が言ったという出来事もありました。(そのときはさすがに、それは嘘を言ったことになるよ、とすぐに注意したものです)


「初めから保険商品の説明をして、買ってくださいと言うのではありません。今まで聞いたことが無いかも知れない保険の考え方についての話しを聞いてください。その上で、もしも具体的に聞いてみたいと思った場合だけ、次の話しをさせて頂きます。」という言い方が、まずまずの正解です。


まことにデリケートにして、曖昧でもあり、やはり生命保険営業の世界は簡単ではありませんね。
よく足掛け18年も続いているもんです。自分を褒めてあげたいくらいです。
やってられないと、ケツマクリしたくなったことも何度も・・・でも、それはどの業界でも共通のことですよね。


さあ、明日も誰かのために、家族のために、そして自分の未来のために、頑張って仕事しましょ!!