独立FPの独白ブログ

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■高野和明「K・Nの悲劇」

ほとんど文庫本と新書しか読まないのは何もお金がないというだけの理由ではありません。経済的な問題だけなら、図書館を利用すればよいことですから。 電車の中で立って読むときには片手で持てる大きさと軽さが重要だし、寝床で横になって読むときもやはり小さな文庫本が手軽なのです。


まあそんなことはどうでも良いのですが、高野和明というまだデビューして4年あまりの作家の作品で文庫になっているのは、先月発売になった「K・Nの悲劇」を含めて3冊しかありません。
江戸川乱歩賞受賞の「13階段」でこの人に非常に強く惹き付けられた私は、昨年暮れに文庫化されたばかりの「グレイブデッカー」をすぐに読みましたが、この小説については、私の期待していた感覚からするとどうもイマイチの印象でした。
「13階段」のリアルな雰囲気が気に入っていた私としては、ちょっと遊びすぎのような感じがしてしまったのでした。暫くしてから再読してみようかとは思いますが。


そして、待ちに待っていた3冊目の文庫本である「K・Nの悲劇」は新聞広告を見たその日に買いました。写実的描写の中にオカルト現象的な雰囲気が共存するちょっと不思議なミステリですが、私が期待する「リアル」さはこの作品にも生きていましたし、なによりも読者の心に切々と訴えかけてくる作者のメッセージの迫力が全編に満ちています。
解説者によると、この作者の作品のテーマには常に人間の罪深さとそのしょく罪の心の切なさと尊さがその根底にある、と言っていますが、そうしたハードなものもあまり理屈っぽくなることなく、人間の感性の描写の中にうまく盛り込まれているように思います。


ミステリなので内容には触れませんが、自分のことを誰よりも神経質で怖がりだと思っている妊娠中の女性のかたは、お読みにならない方が良いかと思います。
ご出産後にゆったりとした気分で読めば、母となられた喜びが増すことになるかも知れませんので、読むのはその時まですこしガマンして下さい。
恋人のいる若い男性にはぜひ読んで頂きたいと思います。


関係ありませんけど、この本の表紙のイラストはタレントのYOUさんにちょっと似てませんか?



K・Nの悲劇 (講談社文庫)

K・Nの悲劇 (講談社文庫)