独立FPの独白ブログ

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大人のための歴史教科書

大人のための歴史教科書。これはこの夏に発刊された保阪正康著「あの戦争は何だったのか」の副題です。 歴史を、特に現代史をキチンと勉強したことがないという日本人はひょっとすると相当多いのではないかと思っています。
私の経験で言えば、世界史や日本史の授業で3学期の最後の授業が近づいてきた頃に、まだ明治時代あたりをウロウロしていたので、その後かなりスピードアップして現代史を片付けてしまうことになり、どうせ大学入試問題にもあまり出題されないからいいや・・・・ってなことで終わってしまいました。 その後、情けない事に歴史を勉強するという意欲を持ったことは無く、結局この歳になるまで恥かしながら歴史知らずで生きてきたのです。


もしも人間の脳に昨日の経験、記憶が全く積み重ねられない状態が継続するようなら、誰もがいつまでも生まれたばかりの赤ん坊のままであり、社会というものが成り立たないでしょう。 昨日の経験を今日に生かすことができるからこそ、未来への希望があるのですから、思えば歴史を知らずして我々には希望は無いとも言えるのではないでしょうか。


人間の心には「トラウマ」という問題があり、幼少時期に心に受けた傷が遠因となって暴力行為を繰り返すとか、人間関係がうまくこなせないという人が存在します。
国民感情というレベルで見た場合でも過去の歴史的事実(または歴史認識)がトラウマとなって、どうしても超え難いカベがいつまでも存在する、ということがあっても不思議ではないでしょう。 またそうした国民感情を時の政権が外交手段のひとつとして冷徹に利用したりすることがあるのも事実です。 そんなことからも、我々はどうしても歴史というものにもっと真摯に向き合う必要があると思います。


国際政治の舞台で特にアジアとの関係において、いつもいつも引き合いに出される「太平洋戦争の日本の責任」に関連する歴史感について、自分の意見はどうなのか、歴史ファンでなくても、史学科の学生でなくても、すべての国民が少なくとも自分の意見を確認しておく必要はあるのではないかと思います。そういう最低レベルをクリアーしてもいない日本人には、例えば、首相の靖国参拝について他国から言われる筋合いではないなどと放言する権利はまったく無いはずです。


せっかくの戦後60年なのだということもあって、良い歳オッサンになってようやく昭和史、戦後史などの入門書的なものを少しずつ読み始めた訳です。そして最近出合ったのが本書でした。保阪氏のこの本は日本が戦争を始めるに当たって何が問題だったのかということや、未曾有の犠牲者を伴って敗戦に向かっていったプロセスや、アメリカの占領政策が戦後の日本にどのように影響するようになるのかを考えるきっかけを提示してくれています。
そしてあとがきにもあるように、あの戦争のプロセスにひそんでいるこの国の体質、国民の社会観、人生観の不透明な部分に光を当ててくれているのです。


冒頭で触れたように、世界史、日本史の授業は多くの学校で知りきれトンボに終わっている可能性があります。 現在社会における歴史の役割から考えれば、歴史の授業は現代史、昭和史から初めたほうが良いのではないかと思います。多くの人にとってこの本は、歴史を知る必要性を教えてくれる好書となり得るでしょう。


無知は時として犯罪行為ですらあると私は思います。


あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書 (新潮新書)

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